百合子さんは自分の話もしてくれた。

前の彼氏の話とか、こうしなきゃいけない事。


大事な人が居るなら、その人と同じくらい自分も大事にしなきゃいけない事を教えてくれた。


僕は恋の話をする事自体初めてで、新鮮だった。

静かにきいてくれた事も嬉しかったけど、何より僕以上に喜んでくれた事が嬉しかった。




“普通”になりたかった僕。

それが当たり前で、生活している女の子たちに憧れてた。


でも、千尋さんと一緒に居れる事を当たり前だと思いたくない。

千尋さんの存在を、“当たり前”にしたくない。


千尋さんは特別。

それは変えたくなかった。



どんなにこれからの生活に慣れてしまっても、これだけは忘れたくない。




バカみたいに繰り返す、遊びで書いてるような何を伝えたいかも分からない小説によく出てくるような言葉。



   “60億分の1の確率”


それは奇跡に近いというか奇跡そのものだけど、この恋はすごく僅かな可能性から生まれた恋だと思う。


あの日、僕が気まぐれであの町に行かなければ…
あの日、千尋さんがあの道を通らなければ…


僕たちは出会えなかったのだから…