僕は千尋さんと別れて、受付を素通りして親父の居るしん診察室に入った。


「あぁ、お前か。昨日はどこに居た。」

「…」


怒ってないみたいだった。

嫌われちゃったの、かな…?


そう思うとなんだか哀しかった。



「男でも出来たか?」

「え?」

親父は僕の点滴の準備をしながら喋っている。
そこに横になれ、と言われた通りに動く。


「昨日。百合子さんがな、お前に彼氏でもいるんじゃないか、と言ってきた。物好きもいるもんだな…」



口調は変わらないが、なんだかいつもと違う様な気がする。

「昨日、出来た。」


「そうか。刺すぞ。」

今日の親父は、なんか優しい。
別人みたいだ。

点滴の針を僕の腕に刺す。
左腕はもう皮膚が硬くなってしまっている。


「あの…、その人と一緒に、す、住みたいんだけど…」


こんな親父は初めてだし、嬉しいけど、やっぱり

一緒に住もう、そう言ってくれた千尋さんの言葉を大事にしたい…