さっさと頭も洗って、風呂をでた。

可哀想な僕をこれ以上見たくない。
明日は休みだから、今日事が終わってから
僕は僕をうんと可愛がってやろうと思う。


髪の毛についた水滴をぽたぽたと落ちない程度に
タオルで吸い取って、僕はリビングに向かった。

味噌汁の良い匂いが、鼻につく。


「あ。ご飯出来たけど、食べる?」



百合子さんがエプロンで手を拭きながら聞いてきた。
僕の返事を待っているけど、百合子さんだって答えは知っている。

「ごめんなさい。要らないや」

「そう…食べたくなったら言ってね。すぐ作るから」



もうずいぶん何も食べていない。
最期に百合子さんの手料理をたべたのは、いつだっけ?

せっかく作ってくれたのに、毎日毎日手も付けないでいても
百合子さんは怒らない。
文句すら言わない。

きっと心の中では、僕に腹を立てていると思う。
本気で僕の事を心配してくれる人は、きっと居ない。




僕は申し訳なく思いながら、蛇口から捻って出てきた冷たい水を
コップに注いでリビングにある椅子に座った。