「まずあそこに座って本を読んでいる二人がいるでしょ?」

風が指差した先には確かに本を読んでいる2人の女子がいた。

片方は透き通った水色の短髪でブレザーの色は薄い青、もう片方の髪はピンク色でブレザーは緑だった。

奇抜に思うかもしれないが、今となっては自分にとって当たり前の光景になってしまっていた。

「髪の短いほうが音無 琴音(おとなし ことね)で長いほうが響 愛(ひびき あい)って名前、琴音は英語が得意だし、愛は歌がとっても上手なの。」

見た限りでは悪くなさそうだ、有益率35%といったところだろうか。

「あっ!またその眼!」

いきなり風が叫んだ。

「な、何?」

「その眼よ!他人を値踏みするようなその眼!」

どうやら彼女の事を少し見くびっていたようだ。

彼女は想像以上に面倒臭いタイプだ。

私はため息をついた。

「分かったわよ、もうしないから。」

「分かった、約束、ね?」

風が小指を立てた。

私も小指を立てて風の小指に引っかけた。

「はい、指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ますっ!」

「・・・何それ?」

「古くから伝わる約束の際の決まり文句よ、昔は嘘だったら実際に千本飲ませてたみたいだし。」

ゾッと体から血の気が引く。

「嘘よ、このご時世そんなことする訳ないじゃない、全く。」

良かった、まさかとは思ったがこの人に針を千本飲まされるのはさすがに死ぬより辛そうだ。

「はい、次、あそこでギター弾いてるのが一二三 一二三(うたかね わるつ)、軽音楽部でギターやってるの、一二三(ひふみ)ってお姉さんがいるんだけど、正直身長以外で見分けがつかないわ、名前も。」

黒いブレザーを着たワルツはすっかり自分の世界に入り込んでいる。

「・・・!!・・!・・・!!・・・!・・!!!」

何を言っているのか聞き取れないが、何かを歌っている。

風に聞いてみた。

「何て歌ってるの、あの歌。」

「さあね、本人しか知らないわ。」