相変わらず厳しい冷え込みを見せる東京。

灰色の空の下で私はただ暇を持て余しながら電車を待っていた。

学園の目の前に駅があるから電車から降りて少し歩けば高校に着くらしい。

半年分の定期券を握りしめてただ電車を待ち続ける。

天気予報によれば雪は降らないそうだ。

アナウンスが流れてもうすぐ電車が来ることを知らせた。

電車が止まる。

普通なら通勤ラッシュの時間帯のはずなのに電車の中はさほど混んではいなかった。

適当に空いている席を見つけて座った。

誰かこっちに歩いてくる。

中くらいの長さの金髪を後ろで結んだ彼女は緑色のブレザーを着ていた。

「ハロー、ごきげんよう。」

「おはよう。」

見た目から察するに面倒くさいタイプの人間だ。

適当にあしらってやり過ごそう、そう思った時だった。

「あなた転校生でしょう、友達になりましょうよ。」

「えっ・・・。」

突然の言葉に私は驚いた。

普通見ず知らずの人間に「友達になろう」何て言う人は今まで見たことがなかった。

「何？私じゃ不満？」

彼女は笑顔でこちらを見つめている。

予想的中、面倒くさいタイプの人間だ。

でも学校で一人ぼっちというのも何か不自然だろう。

こういうタイプの人間は人脈もありそうだし、友達になってみるのも悪くはない。

「いいえ、そんなことないわ、私は速水鼎、よろしく。」

彼女に手を差し伸べる。

「私は風見風（かざみ　ヴァン）、よろしく。」

彼女の金髪にはどうやらそれなりの理由がありそうだ。

風は私の手を両手で強く握った。

「名前、変わってるでしょ？お父さんが外国の人なの。」

「ううん、全然変じゃないよ、カワイイし。」

ああもう面倒くさい。

いつまでこのキャラクターを演じることが出来るのか不安になる。

そして風は握っていた手を離すと、私だけに聞こえるように囁いた。

「貴方のクラスは１－B組、席は黒板側から見て右から２番目、後ろから２番目よ。」