そう、これは二人の秘密―――
早瀬唯織は女、高槻悠稀は男。
だが学校では性別は逆として通っている。
それには、後二つの秘密も関係してくる。
その中の一つは、二人の家が関係してくる。
「早瀬財閥のお嬢様、高槻財閥のお坊ちゃまとして扱われるのが嫌だと言ったのは、お前たちだろう」
誠人のその言葉に、悠稀の文句が止まる。
「将来嫌でも後を継ぐんだ。今は自由にさせろ」
誠人はこの学校に入るときの、悠稀の言葉を繰り返す。
二人は既に大学を卒業している。
今は、財閥を継ぐまでの自由時間として、この学校に通っているのだ。
「悠稀、誠人さんの言うとおりだよ。私たちは本当はこんなこと出来ないんだから」
唯織もゆっくり諭す。
ようやく落ち着いた悠稀は、もう一度ソファに座りなおした。
「分かってる。ここに入学させてくれたのは、感謝してる」
不貞腐れた表情でそう言う悠稀は、本当にそう思っているようだった。
それを見た二人は顔を見合わせて苦笑した。
二人も、悠稀が本当に嫌がっているのではないと分かっていた。
最近忙しかったため、ストレスが溜まっていたのだ。
落ち着いたらしい悠稀の隣に唯織が座り、向かいに誠人が座った。