体育館から離れる二人に大勢の視線が注がれる。


尊敬や畏怖、嫉妬など多くの視線の中を二人は堂々と歩いていく。


そしてそのまま二人は体育館を去り、校舎の最上階である五階の一番奥の部屋、生徒会室へと入っていった。


パタンッ

二人しかいない部屋の中に、扉の閉まる音が響く。

扉を閉めた唯織はそのまま鍵も占めると、ソファに倒れ込んだ。


「疲れた~」


「お疲れ唯織」



そんな唯織の優しく声を掛ける悠稀。

二人しかいない部屋の中で聞こえる声。

だがそんな二人の声は、先ほどの体育館で話した時の声とは微妙に変化していた。


唯織の声は高く、悠稀の声は低く。



「カツラ暑い」


そう言って黒く短い髪に手を掛けた唯織は、一気に引っ張った。

そこから出てきたのは黒いが、長く艶のある髪。

眼鏡を取った顔立ちは紛れもなく、女のもだった。



「俺も取ろうかな」


悠稀も同じように髪に手を掛けると引っ張る。

そして色は同じだが、短い髪が現れた。

長いカツラを持って唯織を心配する姿はまさしく男。



今までと見た目も雰囲気も変化した二人。

今の二人は誰からみても、

唯織は女

悠稀は男

そのように見える。