「この香水も良い香りですね」
さりげなくユウを隠しながら、ユイが香水を褒める。
座っていたユウはユイの背に隠れることになる。
すると長岩は気分を害したようにユイを睨みながら、鼻を鳴らす。
「当然だろう、儂の会社が作ったんだぞ。…お前には用が無い、どこかへ行け」
犬を追い払うように手を振る長岩に、内心気分を害しながらもユイは笑顔を保つ。
「分かりました。ではユウと共に失礼させてもらいます」
ユウの手を引き、出口へ向かうユイに長岩が怒鳴った。
「待てっ!ユウは置いて、貴様だけ消えろ!!」
その大声に、スタッフたちも何事かと注目する。
「……あのオッサン、よくあんな恥さらしができるわね」
「……ユウは黙って下さいよ。今日は俺が男役ですから」
「……分かってるよ」
二人の会話が聞こえない長岩は、いつまで経っても動かないユイに憤慨し、近くまで来てユウの腕を掴もうとした。
―――パシンッ
ユイに腕を弾かれた長岩は真っ赤になりながら怒りで震えた。
険悪な様子に気付いたスタッフたちが駆け寄ろうとするが、ユウがそれを目で制する。
「何をする!!お前風情が儂に逆らえると思っているのか!?」
「………」
何も喋らず長岩を見るユイに、馬鹿にしたような視線を投げた。
「分かったらさっさとユウを置いて行け」
「長岩社長、それは…!」
カメラマンが止めようと声を上げるが、長岩の怒声がそれを止める。
「儂に逆らったら、路頭に迷うぞ!!」
スタッフに止められながらカメラマンが悔しそうに下がった。
「…馬鹿ですか」
そんな中、ユイの涼しげな声がスタジオに響く。