ゾックは一年前に起きたその事件について、静かに語り始めた。


『昨年のバレンタインの日、お面ライダーが不特定多数の男にチョコレートを配るという事件が起きた』


「……それ、事件なのか?」


『モテない男たちに希望を与えるため、とヤツらは犯行の理由を語った』


「……そんなんで希望与えられるのか?」


『だが、よく考えろ。それでももらえなかった男はどうなる! バレンタインは世のモテない男を苦しめるだけの悪しき習慣だ!』


「知らねえよ!! 考え方ネガティブすぎんだろ!!」


『そこで私は考えたのだ。この日本からチョコレートを失くす、地獄の軍団を作ろうと!』


「何言ってんのオマエ!! くだらなすぎるだろ!!」


『そこで新たな同士よ、君に白羽の矢を立てた』


「え……俺に?」


『君がバレンタインだというのにフラれている現場に遭遇した私は、“象でも一瞬で眠りにつく”という強力な睡眠薬を使って、強制的に君をここに連れてきた』


「ふっざけんな!! 道理でここまできた記憶がないと思ったわ!!」


『モテない男代表に選ばれた気分はどうだ? 新たな同士よ』


「最悪に決まってんだろ!! それで喜ぶバカがどこにいる!!」


『だが私は確信している。新たな同士よ、君なら“史上最強の覆面戦闘員”になれると』


「史上最強……」


 新たな同士は、一瞬、喜んだフリをした。


「……もなにも、戦闘員俺しかいねえじゃねえか!!」


『バレたか』


「そりゃバレるだろ!! そんでさっきから“新たな同士”とか呼んでるけどな、俺にはちゃんと名前があるんだよ!!」