ハデアールは姿現し呪文を唱えた。しかし、何も起こらなかった。


《………………》


『………………』


「………………」


 ハデアールはくるりと体を後ろに向け、ボソボソと話しかける。

しかし、拡声器に声が入っているので、丸聞こえだ。


《困るのでアール。さっき教えた通りにやってもらわないと困るのでアール。姿を見せろといったら、横に出てきて欲しいのでアール》


『………………』


「………………」


 ハデアールがまわれー右! をして、また前を向いた。


《ハーッハッハッハ、お面ライダーは、もうここにいるのでアール。姿を見せろ、お面ライダー》


「またやり直すの!?」


 もじもじもじもじ。

ピンクの全身タイツにハートのお面をかぶった貧乳が、もじもじもじもじハデアールの後ろから姿を現した。

ハート型のお面の口部分にはガスマスクのような呼吸口がついていて、目の部分には小さな穴が開いている。

お面ライダーは、両手を後ろにまわして、もじもじもじもじしながら、ボソボソボソボソ何事かハデアールに耳打ちした。

そして、うしろにまわした手を前に持ってくると、ピンクの拡声器が登場した。

お面ライダーは拡声器をハデアールの耳にぴったり当て、スイッチをオンにした。


【この拡声器つかって話さなきゃだめなのですか!?】


《イタイイタイイタイ! 耳がイタイのでアール!》


 お面ライダーがようやくショックーの存在に気付いて、二人に話しかけた。


【あ……あの、どうなのです? だめなのです? 登場シーンやりなおしたほうが、いいのです?】


「いーや、そのまま続けてくれ」