(カッ、カニカマですかっ!?)
 少女は釘を打つのに必死で、神社に一組のカップルがやって来たことに気づくのが遅れた。
 「はっ!」ワラ人形に集中していた視線をそらした先に少女の意中の人と、その人にやわらかく寄り添い指を絡めた長い髪の恋人がいた。
 「・・・あの、なんだかごめん」
 メイに向けられた先輩の優しい声。
 恋人たちはくるりときびすを返し早足で逃げていった。
(カニカマー!にーがしーませーんよー!)
 猫が猫ダッシュで追いかける。
「オワタ・・・何もかもがオワタ・・・・・・」
 崩れ落ちた少女の恋。
(ここ縁結びの神社なのに呪うほうが悪い)
 神社に春がやってくるのはもう少し先のことだった。