マルチーズが神社に向かってくる声の主を振り返った。
「じゃあ僕は行くね。猫ちゃんと話せて楽しかったよ」
「ああ。また来な」
「うん!そうだ、これあげる。おみやげ!」
 マルチーズは小さなラジオを置いて去った。
(キツネさん、なんじゃこりゃ?)
(レディオだね)
 猫はラジオをクンクンした。
「しかし・・・サムソンだったとは」
 何かの拍子にスイッチを押したのだろう。ラジオから音楽が流れだした。
 ビル・エバンスだった。