「・・・・・って!!!!」


朝日は体温がサーッと下がるのを感じた。

血の気が引くとは正にこういうことを言うのだろう。


「な・な・なんで!?なんで私がアンタの隣なわけ!?!?」


わなわなと体を震わせながら、隣の席に座る生徒を指差す。


「そんなこと言われても。クジ引きで決まった席ですから」


新しいお隣さん―――香山是人は淡々と言った。


相変わらず髪はボサボサ。長い前髪に隠されて目が見えない。

机の上に置いた消しゴムには、もちろんアニメのキャラクターの女の子が印刷されている。



キモい。


キモすぎる。

前髪切れよ!


変な消しゴム使うな!



「うわぁーん!こんな席やだぁっ!」


頭を抱えて嘆く朝日を一瞥して、是人が呟く。


「・・・こっちの台詞ですよ」


ムカッ。


朝日は顔をひきつらせて是人に向き直る。


「・・・あのねぇ、香山くん!喧嘩売ってんの?昨日コンビニで会った時もだけど!アンタ私のこと馬鹿にしてるわけ!?」


怒りに燃える朝日に臆することなく、是人は涼しい顔で言う。


「まあ確実に成績は斎藤さんの方が悪いですよね」


「な・・・!」


事実だった。


確かに是人の言う通りだ。

是人はオタクのくせに勉強はできる。

この間の定期テストでは上位に食い込んで名前が張り出されていた。

それに比べて朝日は赤点を三つも取ってしまっている。

学力のことを指摘されると、朝日には言い返す術がなかった。


「・・・うぅ」


朝日が唇を噛み締めていると、是人とは反対側の席に誰かが腰を下ろすのが目に入った。


「わ・・・朝日ちゃん、隣なんだね」