緑は椅子から立ち上がって朝日の側にしゃがんだ。

顔を思い切り朝日に近づけて言う。



「なんで?」



静かな口調だったが緑の目は笑っていない。
さっきまでのふざけた態度とは一変して神経質な雰囲気が垣間見える。

朝日は緑の豹変ぶりを不気味に思いつつも続けた。



「なんでって・・・。だって・・・是人は・・・」



佐奈達に襲われた時。

是人は助けてくれた。



でも。



あれはたまたま私の定期を渡しに教室に来ただけで。


たまたま私を見つけたから助けてくれただけで。



きっとたまたま気が向いただけだと思う。



あれは是人の気まぐれと偶然なんだ。



わざわざこんな、危ないって最初からわかってるところに自分から来るはずない。