ムカッ。


「わかるわけないじゃない!」


苛立った朝日の言葉に緑はわざとらしく肩を竦めた。


「わぁ、怖い。そうだなぁ。じゃあヒント!えっと~・・・」



緑は舌でペロリと唇を舐めながら考えるように目を上に向ける。
その仕草一つ一つが人をおちょくっているようで朝日は気に入らなかった。

緑は朝日に睨まれていることなど気にもせず、あっ、と言って手を叩いた。
やはりわざとらしい態度だ。



「そうそう!ヒントはオタク!」



「え・・・?」



「だっからぁ~、オタクだよ。オタクの王子様がもうすぐ来るんだよん」




朝日の頭に思い浮かんだのは一人しかいなかった。

ボサボサ頭に長い前髪。
平凡な顔立ち。
華奢な体。


オタクってまさか・・・。




「是人・・・?」



朝日の呟きに緑は満足そうに頷いて両手を上げた。



「ごめーとー!でも景品はありませぇん!」



「なんで是人?全然わけわかんない・・・!」



朝日は緑がいちいちふざけるのを無視することにした。
さっさと話を進める。

緑は完全にギャグをスルーされて少しムッとしながら答えた。


「だからぁ。さっき言ったじゃあん、朝日ちん。おんなじこと言わせないでよね~。頼まれたんだって。朝日ちんと是人くんを苛めちゃって~ってね」