是人は鼻を押さえながら叫ぶ。

朝日はそんな是人に冷ややかな目をむけた。


「うっさい!あんたが生意気な態度とるからでしょっ!」


「ぼ・・僕は別に生意気な態度なんて・・・」


「とったじゃない!なーにが『セントラルチンパンジー』よ!」


「ちょっ・・・!全然違いますよ!『ロイヤルファンタジー』です!どういう耳してるんですか!?」


「だ・・黙りなさいよ!そういうのが生意気なのっ!」


朝日は是人の指摘に真っ赤になりながら言い返す。

そのまま怒りに任せて是人のボサボサの髪を力一杯に引っ張った。


「イダダダダダッ!」


是人が悲鳴を上げて目に涙を浮かべた。


「ちょっ・・斉藤さん!勘弁してください!抜けます!髪抜けますって!」


是人の必死の訴えに朝日はやっと髪から手を離した。

朝日から解放された是人は涙目で自分の頭を撫でた。
そして恨めしそうに朝日を睨む。


そんな是人を見て朝日は満足気に言った。


「いい?次また生意気言ったら承知しないからねっ!この『オタク』っ!!」

言い終わると朝日はフンッと顔を反らしてコンビニを出ていった。


「ありがとうございましたー。またお越しくださいませー」


店内に店員の声が響く。



一人残された是人はまだ痛む頭を擦りながら考えていた。



(コンビニに何しに来たんだ・・・?あの人・・・)


高校二年になった今年、初めて斉藤朝日と同じクラスになった。

活発で勝ち気な性格と、それを象徴するようなボーイッシュなショートヘアに大きな瞳。

自分の周りにいる友達にも、密かに斉藤朝日を慕うファンは何人かいた。


けれど、暗い性格の自分とは正反対な明るい性格。


少し大袈裟だが、是人にとって朝日は住む世界が違う人種だと思っていた。