休み時間。

朝日は腹をくくった。


「あのぉ・・・是人さん、ちょっといいですか・・・?」


「・・・・」



是人は背筋がゾクリとするのを感じた。
これ以上ないぐらいに警戒しながら隣の席の生徒――斎藤朝日を見た。


「なんですか?改まって。突然敬語だし・・・」


顔をひきつらせながら尋ねる是人の視線を感じながら、朝日はしどろもどろになる。


「あ、あのさ、その、えっと」


「???」


様子のおかしい朝日を前に、是人は訝しげに眉を寄せる。

朝日は緊張のあまり心臓が破裂しそうだった。

なにせ今まで誰かに手作りのお菓子をあげたことなど一度も無いのだ。

自分らしくないことをすることが恥ずかしかった。
それに、相手はいつも口喧嘩ばかりしている是人だ。
改まってプレゼントなんかして感謝するのは照れ臭い。

それに、何より絶対に馬鹿にされる気がして躊躇してしまう。


しかし、なんとか自分を落ち着かせ、朝日は後ろ手に持ったクッキーの包みを出そうとした・・・が。




「おーい、香山ー」