ピンポーン。


呼鈴が鳴った。


「来たっ!」


朝日は急いで玄関に走った。

ドアを開けると私服の眞子が大きな袋を抱えて立っていた。


「おはよう、朝日ちゃん」

「おはよう」


二人は挨拶を交わすとすぐにキッチンに移動した。

眞子はテーブルの上に袋を置くと、中から次々と材料や器具を取りだし並べていく。


「これみんな家にあったやつだから使って」


そう言う眞子の隣で朝日は興味津々でテーブルに並んだもろもろを見ている。


「これなに?」


朝日は銀色の筒状の器具を手にとって眞子に尋ねた。
筒の形がハートになっている。


「それはクッキーの型だよ。生地に押しつけるとその形にくり貫けるの」

「へぇー・・・」


眞子の説明に感心しながら手のひらに乗せたハート型に目を落とした。


・・・。


ハート・・・?


ガシャンッ。


朝日は慌ててハート型をテーブルに戻した。


「無理無理無理!」

「え?」

「アイツにハートのクッキーなんかあげるなんて考えられない・・・想像したら自分、きもすぎる・・・。それに変な勘違いされたりしたら・・・」


是人に助けてもらったお礼はしたいと思っていた。

眞子が出したお菓子を作ってプレゼントするというアイディアも調度いいかもと思った。


しかし、ハートはやっぱり抵抗がある。


あくまで是人にあげるのはお礼のクッキーであって決して変な意味のクッキーじゃない。

だからやっぱりハートは・・・。


顔面蒼白で嘆く朝日に、眞子は袋からまたなにかを取り出して朝日に見せた。


「大丈夫。ほら」


朝日は眞子の差し出してきた物を見て感動した。



「わあ・・・」