「ななななんでもないの!うん、全然まったく!なーんにも!」

「・・・?」


顔の前で手のひらをぶんぶん振る朝日に、是人はしばらく怪訝な表情を向けていたが、しばらくすると興味を無くしたのか黒板を見て授業に集中し始めた。


朝日はそっと冷や汗をぬぐいながら思っていた。


やっぱり・・・言えそうにない・・・。









「じゃあ、なにかプレゼントをあげるのはどう?」


眞子が化学の教科書を胸に抱えながら提案した。

我ながらいいアイディアだと思ったのか眞子の瞳はキラキラ輝いている。


「プ、プレゼント!?」


朝日は大袈裟にすっとんきょうな声を出した。

前を歩いている生徒達が何事かと振り返る。
慌てて朝日は口を手で覆った。


次は化学室で授業を行うため、クラス全員移動中だった。


「そう!感謝の気持ちを伝えるならやっぱりプレゼントだよ」

「プレゼントねぇ・・・」


朝日がうーんと頭を捻っていると、後ろから数人の女子生徒に追い越された。


あ・・・。


その瞬間、朝日の心臓がどくんと跳ね上がった。




原田佐奈達だった。