「え?うん。言ったけど・・・?」


眞子はなんてことないように平然と話す。


「なっ・・・」


朝日はズイッと身を乗り出して眞子に接近した。

間近に迫ってきた朝日に眞子は少し怯えた。
構わず朝日はガシッと眞子の両肩を掴むと尋ねる。


「なんで!?なんでアイツが優しいの!?」

「え・・・?」


眞子は朝日の迫力にびっくりして硬直していたが、朝日の言葉を理解したらしく、ゆっくり口を開いた。


「わ、私・・・是人くんと一年の度も同じクラスだったから・・・」

「そうなんだ!それで!?」


興奮気味に先を促す朝日の勢いに押されながらも、眞子は落ち着いて話した。


「えっと・・・是人くんって、中学まで他県に住んでて、高校からこっちに越してきたの。朝日ちゃん知ってる?」


朝日はぶんぶんと首を横に振った。


初耳だった。

まあ、今まで是人とほとんど関わったことが無かったのだから当然だ。


「・・・だからやっぱり是人くんは高校に同じ中学の友達はいないじゃない?」

「うん・・・」

「それで、一年の頃の私のクラスって人数が奇数だったんだけど。そうすると授業で二人組になったりするると絶対誰か余るじゃない?」


眞子は何かを思い出すように視線を斜め上に持っていく。


「・・・そしたら是人くん、二人組になる前に手挙げて、"僕は一人でいいです"って言ったんだ」


聞きながら朝日はその場面を想像してみた。

いつものあの淡々とした口調で言い放つ是人が用意にイメージできた。


・・・でもそれって優しいってことなの?

ただ一人が好きなんじゃない?


朝日は思った。

しかし、眞子は先回りして朝日の思考を言い当てた。


「今、朝日ちゃん、それのどこが優しいの?って思ったでしょ」


ギクッ。


「よ・・・よくわかったね」


朝日はバツが悪そうに苦笑した。

眞子もそんな朝日にクスリと笑う。


「私もそれで優しいって思ったわけじゃないよ。・・・私、その時もクラス委員だったの。だからグループの度に是人くんが一人になるのってどうなんだろうって思って聞いてみたの。そしたら――・・・」