「え?是人くんが?」


眞子は目を丸くして声を上げた。


「しーっ!眞子ちゃん!声おっきい!」


朝日は慌てて眞子の口を押さえて後ろを振り返り是人がいないか確認する。


「ご・・・ごめん。そっかぁ。是人くんがローファー見つけてくれたんだ」


眞子は声のボリュームを落として言う。


「うん・・・」


朝日は眞子に昨日起こった全ては話さなかった。

原田佐奈達にローファーを隠され、教室で暴力を振るわれた・・・なんて言ったら眞子ちゃんは心配するに決まっている。

それに真面目な眞子ちゃんなら、先生に言う!なんて言い出しそうだし。

もう終わったことは終わったことだ。

朝日は事を大きくしたくなかった。

だから眞子には、昨日ローファーを無くしてしまって是人が見つけてきてくれた、ということにして話をした。


「・・・やっぱり意外だよね」


朝日は眞子のまん丸の瞳を見つめて言った。


私だって、是人が助けてくれただなんて未だに信じられないもん。

眞子ちゃんだってびっくりして当然・・・――。


「うん、是人君って優しいもんね」

「え・・・?」


朝日は眞子の言葉を一瞬理解できずに固まった。


それに気づかず眞子は話を続ける。


「でも朝日ちゃんローファー無くしちゃうなんて、もしかしておっちょこちょい?あんまり靴無くしちゃう人っていないと思うけど・・・ふふ」


眞子はまさか朝日がクラスメイトにローファーを隠されたなどと思いもせずに笑っている。

しかし朝日はそれよりもさっきの眞子の発言が引っ掛かっていた。


「ま・・・眞子ちゃん、是人のこと、優しいって言った・・・?」