パシッ!






「・・・?」



予期していた痛みはいつまで経ってもやって来なかった。


それに今、なんだか小気味よい音が聞こえたけど・・・?



朝日は不思議に思いながら、恐る恐る目を開けた。



「・・・え?」



なにこれ?


どうなってんの?



「危ないですね。靴は誰かを殴る物じゃなくて履くものですよ」



朝日の目の前に、大嫌いなアイツがいた。



是人・・・!?




是人は佐奈が振り上げたローファーを、しっかと掴んでいた。


佐奈も、後の二人も、出し抜けに現れた第三者に言葉を失っている。


その間に是人は朝日を押さえていた二人を押し退けて朝日を解放した。


「なに寝っころがってるんですか?斎藤さん。床に寝たら汚いこともわからなくなったんですか?そこまで馬鹿だったとは呆れますね」


言いながら是人は、朝日の腕を引いて体を起こしてやった。


呆然とする朝日に、是人はずいっとローファーを差し出した。


「あ・・・」


「斎藤さんのですよね」


いつの間に佐奈から奪い取ったのだろうか。


朝日は驚きながらローファーと是人を交互に見てから、そっとローファーを受け取った。


「お・・・お前!どうやって教室入ったんだよ!鍵かけたはずなのに!」


佐奈が是人を指差しながらまくし立てた。

後の二人も動揺した表情で是人を見ている。


「え?どうやってって普通に入りましたよ。後ろ側のドアは鍵が掛かっていなかったので」


「っ・・・!」


佐奈はバッと立ち上がると後の二人を引っ張って教室から出ていこうとした。



「あ。原田さん」