「なにすんのよ!」


朝日は熱を持つ頬を手で覆いながら佐奈の顔を見据えた。

佐奈は口元を歪めながら言う。


「あんたさぁ。クラスで何様気どってるわけぇ?席替えの時も突然しゃしゃり出てきてさぁ。ああいうエラソーな態度がイラつくわけぇ」


「そーそー」


後ろの二人が笑いながら同意する。


朝日は唇を噛んだ。

だったら始めからそういうふうに言えばいい。

面と向かって言われたら私も態度を改めたかもしれない。

こんなふうに数人で寄ってたかって暴力を奮うなんて絶対おかしい・・・。


「とりあえず、コレ」


佐奈がなにかを手に持って朝日の前にちらつかせた。


「返して欲しいでしょ?」


「!」


朝日のローファーだった。


「返して!」


手を伸ばそうとした朝日に、佐奈は二度目の平手打ちをした。


「痛!」


「ただで返すわけないじゃない。返して欲しかったら私達の気が済むまで殴られなさいよ」


な・・・!


言ってることがめちゃくちゃだ。


逃げようと立ち上がろうとした瞬間、力一杯制服を引っ張られ転ばされた。


したたかに床に腰を打ち、痛みで動けなくなる。

三人の笑い声が響く。

二人が朝日を床に押さえつけた。

朝日は抵抗してもがくものの、二人分の力にはかなわない。


佐奈が笑みを浮かべながら朝日を見下ろしている。


その手には朝日のローファーがあった。


「これで殴ったら痛いかなぁ?」


佐奈は誰に言うでもなく呟くと、ローファーを持ったままの手を振り上げた。



殴られる・・・・!


朝日は咄嗟に目を閉じた。