「そうなんだよね・・・。でもさ・・・どうっしても隣が嫌なんだぁ」


「え・・・」


眞子は言葉をなくした。

朝日ちゃん・・・そんなに私のことが嫌だったなんて・・・。


眞子は目頭が熱くなるのを感じた。

涙が滲んで視界がぼやける。

仲良くなれたと思っていたのは私だけだったんだ。

まさかもう一度席替えしたいぐらい嫌われていたなんて・・・。



「聞こえてますよ」


「!!!」


朝日は驚いて飛び上がりそうになった。


慌てて振り返るとさっきまでいなかったはずの香山是人が隣に座っていた。



「是人!いつからそこに!」

「さっきからですよ。そんなにコソコソしなくてもいいんじゃないですか?斎藤さんが僕の隣から離れたいことぐらい百も承知ですから。それからいつの間にやら呼び捨てするのやめてくれますか?」


「い、いいじゃない別に呼び捨てしたって!」



相変わらず淡々と話す是人に、朝日がああだこうだと言い返す。


そんな二人のやりとりを見つめながら、眞子は胸を撫で下ろしていた。


良かった・・・。朝日ちゃんに嫌われてるのかと思ったけど、嫌がってたのは是人くんのことだったんだ・・・。



「オタクのくせに生意気なのよ!」


「オタクは関係ないでしょう。それから生意気なのは僕より斎藤さんだと思いますけど」


「あー!もう!そういうところが生意気なのっ!」


「そういうところとは?具体的に説明してくれますか?」


「うるさいっ!とにかく生意気なのっ!」


いがみ合う二人をよそに、眞子はうーんと首をひねって考えていた。

どうして朝日ちゃんは是人くんの隣の席を嫌がってるんだろう?


「だって、二人ともあんなに仲良さそうに話してるのに・・・」


眞子にとっては、二人の言い合う様は、仲良しがふざけてじゃれあっているようにしか見えていないのだった・・・。