「何なんだろうなぁ」
「何が」
只今屋上では桐谷先輩と2年生がファッションについて熱く語り合っている。
その傍らでは、話についていけず別の事を考える僕と参加する気のない優。
僕が今までこの時間に考えていたことは、ご想像通りオタばかりだった。
次のフェスに出す同人誌が間に合わないとか、そんな下らないことばっか。
でも今は違う。
オタのことを考えても、何故か希美ちゃんが頭をよぎる。
その事が口からもれていたのか、優が突っ込んで聞いてきた。
「大した事じゃないんだけど、さっきの女の子。みるくちゃんと同じ匂いがしたんだ」
「みるくちゃん?…あぁ、メイド喫茶の」
うん、と僕が頷くと、それが?と言わんばかりの目で見てくる。
「何か、気になるんだ」
「香水なんて誰が何持ってようが同じだろ。お前はあの女の子じゃなくてみるくが好きなんだろ」
「……うん」
でも好きじゃなくて憧れかな、と言うとどっちも同じだろと言われた。