『不審な人は見なかったんですが、先日ちょっと変わった事がありまして…』
『変わった事…?』
『いや、大した事じゃないんですよ。』
司祭は少し笑いながらその出来事について話し出した。
『あれは丁度朝の礼拝が終わった頃で、あの廊下を歩いて居る時でした。
シスターの叫び声が聞こえて駆け付けたんですが、部屋に蛇が居るって言うんですよ。』
『“蛇”…?』
『でも実際私が行った時にはいなかったので、恐らく見間違えかと…』
見間違えだとしても“蛇”というのが引っかかる。
『その蛇が居た部屋ってどこですか?』
『えっと…あちらの、書物庫の向かい側ですけど…』
右京は司祭が指差した方へと歩き出した。
それを慌てて司祭は追い掛けた。
『ま…待って下さい!彼女は今具合が良くなくて…』
『…その蛇の一件からじゃないですか?』
『え!?…確かにそれくらいからですが…』
やはり…
だとすると“コカトリス”の仕業だろう。
右京は修道女の部屋をノックして開けると、ベットの上で苦しそうに荒い息を繰り返す女の姿が目に入った。
『…失礼…』
右京は修道女の腕を捲り上げ、傷がないかチェックをした。
司祭はその様子をただオロオロとして見つめていた。
腕じゃない…
バサッと布団を剥ぎ取ると彼女の足を掴んだ。