日が暮れるのを待って右京がP2を訪れると、ロイとニックが談笑する姿が目に入った。


『早いな。まだみんな来てないぜ。』

『ちょっと気になる事があってさ…』


そう切り出すと右京は借りたい本をデスクの上に開いた。


『この本にデュラハンの記述があるだろ?…ほらここだ。』


右京が指差した一節を二人は覗き込んだ。


『ああ。…何かおかしいか?』

『片手に自分の首を持ってる。』

『デュラハンだからな。普通じゃないか?』

『じゃあなぜ人間の首を持って行く?』

『…確かに…』


少し間を開けてロイは『おいおい』と眉間にシワを寄せた。


『まさか“デュラハン”じゃないとでも言うのか!?』

『あくまでも仮定の話なんだが…』

『だって例のセイレーンが言ってたんだろ?』

『だから、それがデュラハンじゃないんじゃないか?』


右京の言葉に二人はゴクリと唾を飲んだ。


『そもそもあの満月の時、すぐに現れなかったのにも疑問が残るんだ。』


恐らく姿を現せなかったのには理由がある。


右京の話にニックは顎髭をさすりながらうーんと唸った。


『もしその仮定が正しいとすれば、黒い空から現れるのは…悪魔でもない。』

『え!?…じゃあ一体…』


首を捻るロイにニックは静かにこう言った…




『恐らく“天使”だ。』