司書に借りてた資料を返却すると、静かな館内の奥へと進む。


とある一画まで来ると本棚の隙間に入って一冊の本を手に取った。


立てかけてあったハシゴに腰を下ろしてその本をペラペラと捲る。


そこに各地の古い伝承がかかれており、“デュラハン”についても書かれていた。


文章を目で追って読み進めるうちに何となく内容に違和感を感じた。


“デュラハン”自体は悪魔ではなく精霊に分類されらしい。

彼が現れた家には死人が出ると言われ、片手に自分の首を持っていると…


…自分の首を持っているのに他人の首を狩るだろうか?


ダンがグリーンという男から聞いたビジョンの話では確か…


黒い空が割れ、蹄の音ともに顔のない騎士が現れる…というものだ。


…精霊が空から来るのか?


おかしい…やはり違和感がある。


右京はしばらく顎に手を当て考えると、その本を手に再び司書の元に戻った。


『この本が借りたい』と告げたが司書の女性は少し困った顔をした。


『ゴメンね、クロサキ君…
この本は貸出禁止なのよ…』

『そうなんですか…』


右京が肩を落とすと司書は辺りを軽く見回し、身を乗り出すと声を潜めた。


『いいわよ。明日までに返してくれるなら。』


いつも気さくなその司書は右京に軽くウィンクして本を手渡した。


右京は小声で『ありがとう』と言ってニッコリ微笑んでお礼を言うと、図書館を後にした。