テラスを出て右京は一つ伸びをしながらキャンパスを横切った。


丁度図書館の前で自分を呼ぶ声に振り向いた。


『虎太郎か。さっきはとんだとばっちりだったな。』

『ホントよ。あんたが犠牲になれば良かったのに…』


そう答えたのは虎太郎の後ろに居たリサだった。


『だからなんでお前が居るんだよ…余計な事言いやがって…』


リサは自分をライバル視している。

それは右京も前々から気付いていた。

問題はその原因になってる男が気付いてないという事…


『そうだよ、リサ。右京を困らせちゃダメだよ!』


毎度当たり前のように右京の肩を持つ虎太郎にリサがまたイライラしているのが分かる。


『…もういいから…

それよりアランが夜本部に来いってさ。』

『ん。りょーかい。』


『私も行きたい!』と駄々をこねるリサに手を焼く虎太郎を見て右京は溜め息をついた。


『別にリサからコイツを取ったりしない。

後でちゃんと返すから騒ぐな。』

『…そんな風に思ってたの?リサ…』


やっとリサのワガママを言う原因を理解した虎太郎が『なるほど』と呟いた。


『…鈍すぎる…』

『クロウ、私がどれだけ大変かわかるでしょ?』


人の事を言える立場ではないが、さすがに同情すらしてしまう。


右京はリサに『まぁ頑張れ』と肩を叩いて図書館に足を踏み入れた。