授業が終わり、連日の寝不足で睡魔と闘いながら寮の廊下を歩いてやっと自室の前までたどり着いた。
ドアノブに手をかけた時、『右京!』と呼ばれてゆっくり振り返る。
廊下の向こうからすごい勢いで走って来る虎太郎とリサが目に入った。
『…どうし…たぁ!?』
右京は虎太郎に押されて部屋に転がり込むと、そのまま部屋の壁に体を押し付けらる。
『…彼女の前で俺を襲うつもりか?』
鼻の先が触れ合うくらい至近距離のにある虎太郎の顔を右京は半眼で睨んだ。
真っ赤になりながら慌て離れた虎太郎が『すまない』と言いながらリサにドアを閉めるよう促した。
リサは不機嫌な顔付きで『なによ、クロウには迫るんじゃない…』とブツブツ呟きながらドアを閉めた。
『リサがデュラハンに会った事があるって…』
『本当か!?』
『ええ…あるわよ?』
それがどうかしたのかとでも言いたそうな顔をして、リサが少し首を傾げた。
『あの陰気くさい首から上がない男でしょ?』
リサが言うにはデュラハンはむやみに人間を襲う事はないらしい。
『アイツが自分から人間を襲うのは“制裁”の為よ。』
『“制裁”?』
『悪人しか襲わないって事か?』
『ええ、そう聞いた事があるわ。
実際に私が見たのも性悪領主が制裁された時だもの。』
もうかなり前の事で、あまり覚えていないらしい。