「ふーん。聞いてたんだ。」
「あ…ごめんね。聞くつもりはなかったんだけど、聞こえてきちゃって。」
「…今、あいつと一緒じゃないの。親戚の家に居候してる身だから。」
「…そうなんだ。じゃあ、仕方ないね。私の家に来てもらっても良かったんだけど、兄弟が多くて煩いの。ゆっくりできないと思って。また今度話すよ。」
さっと席を立って、彼女から離れた。あれこれと探るような目付きで、どうしても家を知りたいような感じだった。
今日は早く帰れば、誠の出勤に間に合うかも…。
最後の授業は何も頭に入らなかった。
帰るとまだ誠は家にいた。
「はあ、た…ただいま。よかった。間に合った。」
「おう。お帰り。何?そんな慌てて。」
「出勤前に会えるかと思って…、急いで帰ってきた。」