「へー、ちょっと見ないうちに色っぽくなってんじゃん。」
やだ…。気分が悪くなってきた。背中に嫌な汗が流れた。
「おい、行くぞ。」
誠が戻ってきた。少しほっとして「うん。」と言った。
が、――。
手首をぐっと捕まれてしまった。痛い…。
「離して!」
思わず出た大きな声に、先に行きかけた誠が振り向いた。
「何してんの?こいつと知り合い?」
「知らないよ!こんな男。」
「何言ってんだよ。俺たち兄妹じゃないか。」
ニヤニヤと嫌な笑みをたたえた口元を更に吊り上げた。
「あんたなんかと兄妹じゃない!」
手を振りほどこうと暴れてもピクリとも動かない。更に力を強めるばかりだ。