しばらく家を見て懐かしんでいると、ハラダのお婆ちゃんが言った。
「あんたらは、この家どうするね?」
「どうする…て?」
「もうフクさんの持ち物はこの家だけだ。畑も何もかも、処分しちまったからね。
フクさんの娘さんは、一人は亡くなって、一人は音信不通だと聞いとるし、あんたらが売るならそれもええやろ。
それと、これはフクさんの願いなんじゃが…、できればあんたらのどっちかに位牌を引き取ってもらえんかの。
ずっと死ぬまで、あんたらに会いたい、と言っとったで。」
「分かりました。今まで色々とお世話になってありがとうございました。
この家は、この裏の畑の所有者に買って頂ければありがたいです。それと、お墓は…。」
「墓はお寺に頼んで世話してもろとるよ。こことは反対方向じゃから、一旦戻ろかの。」