誠の家に帰ってきた。心のどこかで〈駄目だよ〉と声がしたけど、〈後もう少し〉と言う声が掻き消してしまった。
「あの、一つ聞いていい?」
「何?」
「その…誠が昔住んでた田舎ってどこ?」
「大分だけど。」
「中田圭一の事は覚えてたんだよね。…私は?」
「は?」
「私の事は覚えてないの?」
「…お前もそこにいたのか?」
「うん。たった二週間程だったけど。どういう繋がりの人かは知らないんだけど、おばあちゃんと一緒に住んでた。」
「へー。そのばーさん、何てーの?」
「よく覚えてないけど、大人の人は『フクさん』て呼んでたと思う。」
「…お前、それいくつの時だ?」
「んー、確か五歳くらい。」