誠は玄関を出て立ち止まった私を振り返った。

「どうしたんだよ。行くぞ。」

「……。」

「聖良?」

「…私…私…。」

〈何を言うつもり?もう誠のところへは帰らないの?〉

〈駄目だよ。これ以上迷惑はかけられないでしょ?〉

二人の聖良が言い争う。もうどうしたらいいのか分からない。

その場にしゃがみ込んでしまった。

「世話の焼ける奴だな。ほら。」

背中を向けてしゃがんだ誠。

駅で倒れた時のように、またその背中に吸い寄せられた。

温かい…。

ギュッとしがみついた。