私の右手は彼の左手が握っている。彼の右手は私の左の頬にそっと添えられた。

だんだん顔が近付いてきて、

「好きだ…聖良。」

と言って、私の口を塞いだ。

優しい、触れるだけのキスだった。

彼を受け入れた訳ではなく、でも拒否する事もなく、されるがままだった。

あの血の繋がらないあいつに逆らうと、生きていけないという思いで、言いなりになっていた時のように、ただ人形のようにそこにじっとしていただけ。

その時、ケータイが震えた。

彼のベッドの上に置かれた、誠専用のケータイ。

手を伸ばそうとして、そのケータイを先に取った中田圭一。