4月。
あたしは当初の予定通り、NISに入社した。
研修期間を終えて、いよいよ今日は初鳴き。(初鳴き…アナウンサーなどが初めて電波に声を乗せること)番組デビューする。
サブのソファにどかっと座るプロデューサーはもちろん、…烈火さんだ。(ちなみに、アイドル計画はまだ諦めていないらしい)
オンエア中の隣のスタジオでは、大崎くんがスタッフとして忙しく走り回っている。
毎日、新しいこと、新しいものばかり。
出来ないことが出来るようになるたび
知らなかったことを体験するたびに、ワクワクする。
そんな日々が、これからも続いていく。
「サラちゃん、本番10秒前でーす! 8、7、6、…」
…さぁ、行くよ!サラ!
時報が鳴る。
ジングルが華やかに打ち立てて、電波を、あたしを、鼓舞する。
「みなさん、こんばんはーーーっ!はじめまして!ニューフェイスDJの安藤サラです!この春NISに入ったばかり。ピカピカの一年生、…フレッシュメンです!」
お前にやるよ、とトウマから譲り受けた黒のヘッドフォンが、耳を柔らかく包んで安心させてくれる。
何かを託された感じがして、自信になる。
うん、…うん。
大丈夫。
離れていても、繋がってる。
淋しいけど、がんばるよ。
海の向こうの貴方にも、
届けよう、…この声を。
「それじゃあ、きょうはこれだけ覚えてください! 番組名はーーーー…
DJサラの… S * S * S ☆★」
完