「演出って、烈火さん? …さっきのは、ああなるって分かっててやってたってこと?」

「…予想の範囲内だろうな。俺がお前に惚れるのも、局から出て行くのも。 ただ、踏まなくていい轍はわざわざ踏みたくないからとりあえず焚き付けて、本気かどうかを試していた、ってのが真相だろう。どう転んでも損失は最小限に抑えられるように、な。」


そういえば、一昨日の夜、烈火さんが言ってたっけ。トウマはこっちに来てからずいぶん人間らしい感情を表に出すようになってきたって。ご両親の死やSarahさんのことを…懐かしそうに、目を細めながら…愛おしそうにすら。


「トウマ…」

「…覚悟は、決めたか?」


睫毛が触れそうな至近距離で囁かれる。


…なんて甘いの。

ヤバい。クラクラする。
こんなに長時間、この人と瞳を合わせていたことなんてないんだもん。さっきサエさんに注がれたシャンパンの所為もあるのかな。もうずっと、呼吸が浅いままで苦しいの。


覚悟…?

しよう、じゃないか。


「…うん!あたし、4月から死に物狂いでがんばる!DJトウマを辞めさせた女、って逆風が吹いても耐えるよ!」


スタートは厳しいものかもしれないけど。
あなたは近くにいてくれなくても。

そう、心に誓って強く宣言した、のに。


トウマは「そういう意味じゃない」と笑って、あたしの首筋に顔を埋めた。



痛…ッ、!?