押し付けられたタキシード越しに、トウマの心臓の音が聴こえる。
ドクドク脈打つ、力強い音。
・・・信じられない。
信じられないけど
いま確かにあたし、トウマの腕の中にいる。
そして降りてくる、艶やかなバリトン。
あたしの、大好きな。
「お前に会って、はじめて他人に心を動かされることを知った。胸が焼け付くような嫉妬も味わった。はじめて…安らぐという心地も知った。サラ、」
“ I love you.”、という声が耳元にそっと忍び込んできた。
・・・ ウソ、だ。
急かしたくせに、
心のどこかで
それが嘘じゃないって分かっているのに、
いざ真正面から愛を告げられれば否定したくなる、なんて。
一体どんな思考回路をしてるんだろう。なんて面倒くさいあたし。それとも、乙女ってみんなこういうもの?
…トウマ、ほんとうに?
それ、信じて良いの?