トウマと烈火さん。
NISーFMのビッグ2が次から次へと繰り出す爆弾発言に、会場はかなりザワついていた。スキー場だけじゃなく、きょうは局の関係者も多いから当然だ。さっきどこかで聞こえた女性の悲鳴は、トウマのファンなのかもしれない。


あああ、なんてことだろう。

もう、後戻りできない。

撤回も弁解もなにも。



「…さて、それでは宴もたけなわでございます。」


トウマが静かに笑みを湛えて、マイクを置いた。

「忘れていましたが、怪盗は姫を攫ってゆくもの…この後は仮面舞踏会(マスカレード)。みなさんも、どうぞ楽しい夜を。」


決め台詞と共に、トウマがあたしを横抱きにした。キャー!という悲鳴やどよめきが再び会場から起こる。



………っていうか、


「ちょっとトウマ降ろしてよっ!!まだ話は終わってないっ!!あたし、怒ってるんだからねっ!!」


降ろせーーーっ!
どこ連れてくつもりなのよーーーっ!?


「嫌だね。」


まだ呆然とマヌケな表情をしたままの烈火さんがどんどん遠去かっていく。


「どーーーーすんのよっ!?烈火さんにケンカ売っちゃって…」

「ジタバタすんな。重いんだから。」

「重…っ、 なら、降ろしてよっ!!」

「うるさいな。お前、これ以上噂になりたいのか。そうか。それなら仕方ないな。」


ニヤリ、と弧を描いた口元に視界を奪われた。
ノォッ!!


「むーーーーーーーーーーーっ!!!」


なにすんだこのバカDJーーーーーー!?

ヤバい。もう、さっきからあちこちでフラッシュが光ってる。ああああああああ、明日のスポーツ紙…いや新聞記者は来てないかさすがに。でも雑誌記者は来てるんだよぉぉぉ。てゆーかキス!キスって…もっとこう、……うう、


頭がぐるぐるする。


「ついてけない…」

「お前は普段向こう見ずなくせに、変なとこで考え過ぎるのが悪いクセだ。たまには頭の中空っぽにしろよ。」

「…トウマ、仕事、やめちゃうの?」

「…後でゆっくり説明してやる。」