ちょっと、待って。

頭がついていかない。



トウマ、やめるって…


どうして……




「わざとらしいな、烈火さん。薄々感づいてたんでしょう、俺が裏で動いてること。」

「…いや。」

「気付いていたけど、泳がせておいた。」

「…いや。」

「…ま、いいや。それはさておき、感謝します。安藤のことがなかったら、踏ん切りつかなかったでしょうから。」

「トーマス…!」

「予算的に、新人ひとり入れるならベテランひとり切るって話になってたじゃないですか。」

「いやだが、それは君じゃなくても!!」

「…本音だな。俺じゃなくてもいい、つまり、…俺でもいい、ってことだ。」

「………っ、」



ちょっと…待って。



「ゆ、許さないZO私はっ!!だいたい、君が辞めたら、誰が番組を引き継ぐんだ!?君クラスの大物じゃなきゃ、スポンサーは納得しないYO!!」

「…オレと同等か、それ以上のDJを用意すれば良いんじゃないですか。」

「簡単に言うNA! ギャラは出せないのに、君以上に数字を取れるDJなんて…」

「目の前にいるじゃないですか。」

「……HA…?」

「鏡、持って来ましょうか?」

「………………バカな……まさか、私のことか?」


ニヤリ、
トウマが不敵な笑みを浮かべた。

(くそう、カッコいいなんて思うもんか)


「そろそろ、お遊びのクラブDJも飽きてきたんじゃないですか? 実際、これだけ現場にしゃしゃり出て来るってことは、喋りたくてしょうがないんでしょう烈火さん。

…“伝説のDJ烈火、復活!”。話題性も抜群。烈火さんなら、ギャラもタダ。 これ以上のシナリオはないと思いますが如何ですか?」


「………む、」


立て板に水、とはこのこと。
きっとずっと前から、トウマはこれを考えていたのだろう。


けど、………ちょっと、待ってよ。