「ふ…ふふふ…ふふふふふっ…HAーHAHAHA!!」
何かをふっきったように、烈火さんが吠えた。
「ようやく本気になったNE、トーマス。」
「何度も言ってる通り、安藤はアイドルには向きません。いい加減諦めてください。」
「I・YA・DAっ!もうデビュー曲も出来あがってるんだっ!あれをサラちゃんに歌ってもらえるように温めてたんDAKARAっ!」
「デビューから色モノ扱いしたら、将来まともな喋り手になれないじゃないですかっ!」
「色んな経験を積んだ方が幅が出るってものSA!」
「わからない人ですね、あなたも…っ!」
けんけん、ごうごう。
あたしを挟んで、あーでもないこーでもないとやり合う二人。
ちょっと、待ってよ。
なんであたしの話なのに、あたしは置いてけぼりなわけ?
「とにかく!サラちゃんの売り出し方はさて置き、……君たちの恋愛は、認めん!アイドル計画がなくても、だ!新人アナウンサーと人気ナンバーワンDJの熱愛なんて、認めないからNE!」
ああ、ほら。
そう来るだろうと思った。
アイドルだの何だの、理屈は何でもいいんだ多分。このひとは、わたしたちのことを認めるつもりがない。
高らかに宣言したあと、烈火さんはトウマに向かって人差し指を突きつけた。
「ボスは、私だ。トーマス、君は部下だ。君もまた私の手のうちにあるってことを忘れてくれては困る。」
「……そのことですが。」
トウマが静かにそう切り出したとき、肩に置かれた彼の右手に、ギュッと力が込められたのがわかった。
……トウマ?
一瞬、視線が重なる。
その瞳には、簡単には動かせないような強い意志が滲んでいて、あたしをひどく不安にさせた。
イヤな、予感が、する。
なんだかとてつもなく、イヤな予感が。
………いや。
やだ、やめて……っ!!
「……トウマ…っ、‼︎」