この、お姫様みたいなドレスのせいかな。
みんなの衣装のせいかな。
なんだか、足元がふわふわする。
現実なのに、現実じゃないみたいな。


「では、トウマさんからサラちゃんに、一言お願いします。」


ステージに並んで立つと、大崎くんがトウマにマイクを渡した。

うわっ…
こういうオフィシャルなシチュエーションって初めてでなんか緊張するっ…

トウマはゆっくり周りを見渡して、おもむろに口を開いた。


「まずは野本さんをはじめ、シラカワスノーリゾートの皆様にお礼を申し上げます。安藤が大変お世話になりました。何かと騒がしい上に拙い放送内容でしたが、毎回温かく見守っていただき、感謝しております。」


騒がし……ってちょっ……
うう、でも本当のことだ。仕方ない。
トークが下手なのも、勢いだけで騒がしいのも、全部これまでトウマに注意されてきたことだ。

思わずうつむいたあたしの肩に、ふわ、と優しい感触が乗った。温かくて、安心するこれは……手?


「…安藤は、もともとオーディションでは選外でした。いわゆる、補欠要員だったんです。」

ぎく、っとした。
こんな風に、トウマの口からオーディションのことを聞くのは初めてだったから。

どうしたんだろう。

何を話すつもり、なの?



「その時のオーディションは…今でも忘れられません。一種の、衝撃でした。」

「・・へ?」


しょう、げき?


「他に比べて、トークは明らかに聴き劣りするのに、何故だか声だけはいつまでも耳に残りました。ここまで明確な“色”を持つ声というのはなかなかありません。それはここにいる皆さんも、数カ月の放送を通して実感されていることでしょう。」


心臓がドキドキして、頭が、ガンガンする。
あたしいま、どんな顔してる?


「が、…安藤の最大の魅力は、何よりもその“ひたむきさ”が声に表れているところだと思います。」


暑い。
顔が火照ってる。
サエさんにもらったワインのせいじゃなくて。


「声は嘘をつかない。つけない。ラジオ放送は音声だけのメディアであるからこそ、偽りのない姿勢が前面に出てくる。“パーソナリティ”とはよく言ったもので、この仕事は、本人の人間性そのものを問われるものだと思っています。」


こんな風に誉められたことなんて、ないんだもん。どんな顔していいのか、わからないよ。


「そういう意味では…オーディションのときから、俺はこいつに惚れていたのかもしれません。」


そうだよ。
惚れて、なんて… 惚れ……・・


















・・・・・・・て?