トウマは黒のタキシードを着ていた。舞踏会よろしく、仮面まで付けて。頭にはシルクハット。
なんなんだアレは、、怪人20面相?マジシャン?ネタかよ!と突っ込みたくなるほど…なのに……ちくしょう、…カッコよかった。しかもなんですか、そのボリューミーな赤いバラの花束。それ、あたしに?
「サラちゃーん? 早くステージへー!」
って、
ほいほいと上がれるか大崎のバカーー!!
「もう、なにモジモジしてんのよ!早く行きなさい、よっ!!」
ドン!と背中をサエさんに押されて、つんのめりながらステージ前へ。拍手に後押しされて、もう上がらないわけにいかない。
と、目の前に白い手が差し出された。
「お手をどうぞ、姫。」
キャーーーーーーッ!!
遠くで女性スタッフの悲鳴が上がる。
ああもう、この人はほんとうにムカつく。
ムカつくくらい、キメ時を逃さない。
「あたし姫ってガラじゃ…」
「ふ……まぁ、そうだな。否定はしない。」
文句を言いつつ、ふわりとステージに引き上げられた。