「それでは、あらためて…サラちゃん、お疲れ様でしたっ!これからの活躍を祈って…乾杯!」
「かんぱーいっ!!」「サラちゃん、お疲れさまーっ!」


その日の夜。
センターハウスのレストランを貸し切りにして、スキー場があたしのためにフェアウェル(お別れ)・パーティを開いてくれた。
支配人が洒落を利かせてくれて、ドレスコードは“仮装”なんだって。スタッフみーんな、思い思いに、季節外れのサンタクロースやキャラクターに扮して楽しんでいる。

あたしは何故か、、何故か、オレンジ色のカクテルドレスを着せられている。(仕方ない。ホテルで借りられる衣装なんて、しかも主役が着てておかしくない衣装なんて、ブライダル部にしかなかったのよ。型落ちの、もう使われていないものをご好意で貸してくださった。)
肩には【本日の主役】と派手に書かれた紅白のたすきが掛けられた。誰が用意したのか、頭には色画用紙で作られた王冠も。てか、痛い痛い。ちょっと、これホッチキスで留めただけでしょ!?



「やぁ、安藤さん。」

「野本さん!あははっ、誰かと思いましたよー。きょうは私の為に盛大な会をありがとうございます。」

真っ白な髭をたくわえた背の低いサンタクロースが、ワインを片手に近付いてきた。


「いやいや、スタッフの皆もストレス発散にちょうどいい機会だと思ってね。…卒業おめでとう。短い間だったが、君の放送はほんとうに楽しくて元気が出たよ。」

「あの、本当にお世話になりました。いつぞやはご迷惑もおかけして…」


そう、シュンくんとの、あの騒動の時…駆けつけて助けてくれたのは、この人だ。


「迷惑を掛けたのは、うちの方だ。君には申し訳なかったが、お陰で今後の対策も練ることができたし、気にしないでくれというのもおこがましい話だが…」

「いえ、私も色々と勉強になりました。」