ああ、どうしよう。
どうして、こんなタイミングで気付いてしまうんだろう。
体の隅々まで、隙間なく満ちていく。
満ちて、溢れ出す。
溢れちゃうよ。
好き。
トウマが、好き。
あなたが、トンガリさんでも、そうじゃなくても。
どうしようもないくらい、好き。
「………っ、」
許される、だろうか。
ううん、許可なんて、要らない。
あたしが、いま、話したい。
これが、最後だから。
ここでこそ、あたしはトウマと出会えたのだから。
いま、胸に湧き上がってきた想いを。
正直に。
大好きな、みんなへ。
「最後に…個人的な話を少し、させてください。」
それでも。
直接、想いを告げることは出来ないけど。
バックに流れるtrapの『キミオト』が背中を押してくれた。記憶の中で、奏さんと明ちゃんが微かに笑った気がした。
そうだ。明ちゃんは言ってくれた。
“きっと、大丈夫。”って。
その言葉が、勇気をくれた。
あたしは静かに口を開いた。
「“声に恋する”って、経験。みんなは、したことがありますか?」
きっと多くはない。
けれど、ここにひとり、確かにいるの。
「わたしがいまここでお喋りをしているきっかけは…恋を、したことでした。」
隣で、灯歌ちゃんがハッと息を飲んだのがわかった。
あたしはそれに目線で答える。
…だいじょうぶ。
ぶち壊したりは、しないから。
「でもね、それは直接的なものじゃなくて。ある日の深夜、車のラジオから偶然聴こえてきた“声”にとってもとっても、惹かれたんです。それはもう、理屈じゃなくて。好きだなー、って感じたら止まらなくて。」
カーステレオで出会った、あなたの声に、見事にやられたんだ。
「不思議な体験でした。それから、寝ても覚めてもその人の声だけがどうしてか特別に耳に入ってきちゃって。しまいには、聴こえないと落ち着かなくなっちゃって。それで、聴いてる間はね、本当に満たされて、幸せで仕方なくって、うっとりしちゃうの…って、あはは。重症でしょ?まるで、恋をしてるみたいじゃない?とにかく、大好きで。一日じゅう、耳元で聴いていたいって思ってました。」
実際その本人に会ったら、身も心も正真正銘の恋に落ちてしまったんだけど、ね。
これは、みんなには内緒の話。
「たったそれだけの経験がきっかけで、わたしは今ここに、いるんです。近い将来、わたしもそんな風に、誰かに“恋”してもらえるような喋り手になりたいなって、思ってます。声を、電波に、乗せて―…」
何の合図もしていないのに
大崎くんが心得たとばかりにCDデッキのプレイボタンを押す。
“ Can you hear me? ”
彼女のカワイイ声が語りかけて、あたしの想いを伝えてくれる。
ねぇ、みんな、聴こえる?
聴こえるかい?
スウィートな電波よ、どこまでも届け!
「ラストソングは『 RADIO / JAM 』!みなさん、どうもありがとうございました!今度は電波で、会いましょう!!See you soon!!!!」