『サラちゃん卒業スペシャル』と銘打たれたその日は、番組開始直後からファンの方が沢山詰め掛けてくれた。その後も続々と、スキー場関係者が花束やら餞別やらを手に訪問してくれて、狭いブースの中はあっという間にそれらでいっぱいになった。

ひとりひとりに扉を開けて対応していたら、正直もうDJ業務どころじゃなくて、、なんだか大騒ぎだった。
曲もトークも事前に用意はしていたけれど、マイクの前で喋っていても芯を捉えきれない。なんだろう。いまいち自分がここにいる実感がないっていうか。


いいのかな。
本当にこれでラストなのかな。
終わりってこんなもの?


午後3時。
番組に寄せられたメールは、ついに300通を超えた。


「サラちゃん…なんか…これ、海外在住の方からもメッセージ来てますよ。」

ADの灯歌ちゃんがPC画面を見て信じられない、という表情で呟く。


「は!?一体どーゆーこと!?」

「たぶん、スキー場がネット配信している放送をチェックしてくれたんじゃないですか?」

「うわー、超マニ…ああ、いやいや、熱心なマ…ファンの方だね。」

「大崎くん、誤魔化す気、ないでしょあんた。」

「そうですよ、大崎さん。失礼ですよ、マニアの方に。」

「灯歌ちゃんまでっ!」

「あはははは!でも、スゴイことですよ、とにかく!!こんなのサラちゃんの時だけですもん。」


…そうだ。
もう、ラジオは電波だけのメディアじゃないんだ。ほんとうに、聴こうと思えばどこでも聴ける。どこで、誰が聴いてくれてるか、分からない。どこかで、私の知らないたくさんの誰かが、聴いてくれているんだ。

当たり前だけど、想像も及ばなかったことがラストデーでも起こる。まだまだ、知らないことだらけ。改めて、追求すればするほど、面白い仕事だと思った。