「トウマには…あたしの気持ちなんて分かんないよっ!」
「なに?」
だって。
目なんて合わせたら、もう崩れちゃう。
ピンと張った糸が、緩んでしまう。
緩んで、崩れて、……飲み込まれちゃうから。
最後の番組が終わるまでは、自分でしっかり立っていたいんだ。ちゃんと、仕事をしたい。
あなた、無しでも。
「いま、あたしを助けないで。何もしないで。ひとりで出来る。だいじょうぶだから。お願い。…放して。」
絞り出した声は、細くて高くて、まるで悲鳴のようだった。
いまはあたしの視界から、消えてください。でないと、寄りかかりたくなっちゃう。あたし、そんなに強くない。けど、弱い自分は隠していたい。少なくとも、今日が、このラストデイが終わるまでは。
沈黙はきっと数秒だったんだろうけど、ずっと長く感じられた。
「…………わかった。」
たくさんの言葉を飲み込んだように一言だけ呟いて、トウマは扉の向こうに消えた。
心配してくれたんだって、分かってる。
恋愛感情じゃなくても
少なくとも、目をかけてくれてる事くらい、もう理解してるよ。
可愛がってくれたよね。
なのに
こんな風にしか出来ないあたしを許して。
もっと、もっと、もっと。
強くなりたい。
強くなって、あなたを魅了したい。
そんな女になれるかな。
…一体あと、どのくらいしたら?