「……来い。」

「は?」

「早くしろ、時間がない」

「ちょっと…っ!うわっ!何、何ですかトウマさんっ!?」


そのまま後ろからヘッドフォンを外されて、無理やりブース裏の非常階段に連れ込まれた。ギャーーーッ!なになになに!?あと5分で本番始まるのに!!!“時間が無い”ってどの口が言ってんのよーーっ!!!!!



「トウマ!やだもう冗談やめてっ!番組始まっちゃうっ!!」

「…そんなガチガチに固まったまま、何しゃべるつもりだお前。」


扉が背中に当たる。狭い。
ってゆーか、近い近い近い近い。なんなのよ、もう!ほっといてよ!!せっかくあたしから離れようと努力してんのに、トウマから近付いてきたら台無しじゃんかバカーーーー!!!


「し、しゃべることはもう全部原稿に書いてあります。だから大丈…むぅっ!」

言い切らないうちに顎を掴まれる。
いわゆるこれは壁ドンってヤツじゃないのかしら。オール乙女の憧れのシチュエーションだというのに、ええい!なんでこんなに切迫してるんだ、あたし!ああでも甘いムード出してる場合じゃねぇーーっ!!てか、時間!時間がないーーーーーーっ!!早く……


「おい、聞いてるのかサラ。何でさっきから目を合わせない?」

「………そんなこと、」

「…失恋ってどういうことだ。」


強情なあたしをなだめるように、トウマは後ろの髪を軽く撫でた。首筋に緊張が走る。気安く触らないでっ!お願いっ!!