ヴーヴーヴーヴー
微かに聞こえるバイブ音。
萌「…………ん」
パチッと目を開ければ…寝てしまっていたようで部屋は薄暗くなっていた。
私は放っていた鞄の中に入れっぱなしのケータイを取り出した。
萌「!!」
ディスプレイに表示されていたのは“崎山大地”と言う文字だった。
鳴り続ける電話。
いつもならすぐ出る電話も今はそんな気分にはなれなくて……
けど、切れたと思えばすぐかかってくる電話に私はもう仕方なく
萌「もしもし?」
大「何回かけりゃ出るんだよ」
怒ったような口調の大地くん。
今までだったら…「ごめんね」って素直に言えるのに今日の私は言えない。
大「まぁ……いいや。それより今から出て来いよ」
初めてだね。
大地くんが誘ってくれるの。
だけど、「うん」なんて言わない。
自分勝手にデートをドタキャンしたかと思えば、今度は出て来い?
いつもなら飛んで出て行くところだけど今日は…今日だけは…出て行かない。
萌「大地くん忙しいんでしょ?別にデートなんていつでもできるし、気にしなくていいから!じゃーね」
ブチ
電話越しに大地くんが何かを言ったような気もしたけど…知らない。
意地っ張りだって分かってる。
誕生日を祝って欲しかったなら、一緒にいたかったなら、始めから素直に言えば良かったし、今からでも祝ってくれたかも知れない。
だけど…やっぱり今日だけは楓ちゃんより彼女である私を優先して欲しかったって思っちゃうんだ……。